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植田日銀に「政策修正は怖くない」 強気の社債投資家

日経新聞より引用

社債市場で投資家の信用リスクへの警戒感を映す国債に対する上乗せ金利(スプレッド)が縮小している。日銀が長期金利の上限を仮に撤廃しても社債の売りは限られるとの見方から「政策修正は怖くない」(国内運用会社の社債投資担当者)。足元では企業が計画より発行額を増やす動きもあり、大型起債が相次いでいる。

みずほフィナンシャルグループは20日、永久劣後債(AT1債)2本の発行条件を決めた。合計の発行額は2610億円に上った。3月にクレディ・スイス・グループのAT1債が無価値になって以降、三井住友フィナンシャルグループ三菱UFJフィナンシャル・グループに続き3メガバンクが出そろった。

みずほのAT1債に投資するアセットマネジメントOneの加藤晴康ファンドマネジャーは「国内AT1債の安全性や邦銀の収益力を考えると、魅力的な案件だ」と語る。

社債市場では7月、大型起債が相次いでいる。NTTの金融子会社、NTTファイナンスは14日、合計3800億円の発行条件を決めた。1度の起債額としては今年最大だ。6日にはソフトバンクグループの通信子会社ソフトバンクが、7日には東京電力パワーグリッドが各1200億円分を起債した。

起債ラッシュでも、市場環境は良好だ。格付投資情報センター(R&I)で「シングルA」格の10年債のスプレッドは足元で0.6%ほどと、4月の0.7%程度をピークに縮小傾向にある。

日銀は27〜28日に金融政策決定会合を開く。外国為替市場や株式市場では、現状0.50%程度とする長期金利の上限を引き上げるか撤廃するとの思惑がなお根強い。仮に修正すれば国債利回りが上昇(債券価格は下落)し、社債価格も下落しかねない。だが、発行市場、流通市場ともに日銀会合への警戒感は乏しい。国内証券会社の引き受け担当者は「投資家の需要が強く、年度の資金調達計画を超える額を発行する企業もある」と話す。

植田和男日銀総裁の就任後初の会合を控えた4月までは、これほどの楽観はなかった。世界的に米欧金融不安などで市場心理が悪化した3月の起債額は約6000億円と2月から約4割急減。スプレッドは拡大した。

その後、国内金利上昇への警戒感は大幅に後退した。米金利は低下傾向にあり、米利上げの終わりが見えつつある。マニュライフ・インベストメント・マネジメントの押田俊輔クレジット調査部長は「緩和修正で多少スプレッドが広がれば押し目買いの好機になる」と話す。

「長期金利の上限を撤廃しても、マイナス金利の解除は当面ないと植田総裁が説明すれば、金利上昇幅は限られる」(みずほ証券の大橋英敏チーフクレジットストラテジスト)との声もある。

新年度の新規資金の流入も追い風となり、社債発行額を投資需要が上回る需給環境の良さが続いてきた。ある国内大手生命保険会社の運用担当者は「日銀が動く可能性は気になるが、これまで持ち高を落としていた分、積極的に買いを入れている」といい、植田日銀に動じない。

もっとも、市場では「証券会社が保有する社債の在庫も増えてきており、需給は緩みつつある」(ある国内運用会社の担当者)と警戒する声が出始めた。7月の起債額は2兆円程度まで膨らむ見通し。4〜7月の合計では6兆円程度と、過去最高のペースだ。金利上昇懸念の後退を織り込んだ後は、銘柄選別の姿勢が強まる可能性もある。

(井口耕佑)

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