29日の日経平均株価は前日比75円安の3万3464円で取引を終えた。年間ベースでは7369円(28%)高と、アベノミクス初期の2013年以来10年ぶりの上昇率だった。年末終値は7月に付けたバブル経済崩壊後の高値(3万3753円)には届かなかったが、幅広い銘柄が上昇。時価総額10兆円を上回った企業の数は過去最高の10社となった。
年末終値は1989年(3万8915円)以来、34年ぶりの高水準だった。年前半には東京証券取引所による企業への資本効率改善要請や米著名投資家ウォーレン・バフェット氏の商社株買い増し、年末にかけては米連邦準備理事会(FRB)による早期利下げ観測などが株価を押し上げた。
時価総額が10兆円を超えた上場企業は10社と、年末ベースで過去最高となった。東京エレクトロンやリクルートホールディングスが再浮上したほか、信越化学工業が初めて「10兆円クラブ」に入った。三菱商事やオリエンタルランドも一時、大台に乗せた。
東証プライム市場の株価騰落率を見ると半導体関連銘柄の上げが目立った。今年は世界的に生成AI(人工知能)ブームが巻き起こり、幅広い分野で需要拡大への期待が高まった。米画像処理半導体大手エヌビディアと連携を深める、データセンター運営のさくらインターネットは4.4倍に急伸。値上がり率で首位となった。
半導体製造装置のTOWAも4.2倍、製造過程で使う超純水製造装置の野村マイクロ・サイエンスも3.6倍だった。時価総額の大きいSCREENホールディングスやディスコも3倍近く上昇した。ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「メモリー市況にも底入れ感が出ており、半導体は来年以降も続く長期の投資テーマになる」と話す。
東証の要請を受け、PBR(株価純資産倍率)の低いバリュー(割安)株にも資金が流入した。東京鉄鋼が2.9倍、神戸製鋼所が2.8倍と、割安株の代表業種である鉄鋼株が大きく上昇した。PBRはなお1倍を下回るが、株主還元の拡充などが投資家を引き付けた。
一方、世界的な金利上昇が逆風となり、財務基盤が比較的弱い銘柄では下げがきつかった。新電力のイーレックス(年間で64%安)は電力調達コストの上昇で24年3月期に赤字転落を見込む。アウトドア用品大手のスノーピーク(同61%安)は新型コロナウイルス禍からの経済正常化に伴うキャンプ需要の減少で業績が落ち込んだ。
QUICKによるとプライム市場の年間売買代金は約830兆円と、東証1部を含めてデータを遡れる1998年以降で最高だった。首位はレーザーテック(約63兆円)で、1社でプライム全体の約8%を占めた。ニッセイ基礎研の井出氏は「新NISA(少額投資非課税制度)が始まる来年も個人マネーが流入する銘柄が増えそうだ」と指摘した。