23〜24日に開く日銀金融政策決定会合を前に、日銀が追加利上げ決定を示唆する情報発信をしている。20日に米大統領に就くトランプ氏の言動によって、市場や経済に大きな混乱が起きたり、起きそうになったりしない限り、0.25%程度から0.5%程度への政策金利引き上げが決まる可能性が高い。
昨年12月の前回決定会合で金利の引き上げを見送った日銀だが、植田和男総裁は会合後の記者会見で「(追加利上げ判断に)もうワンノッチ(一段階)ほしいなというところかと思う」と語っていた。「ワンノッチは日銀文学的にはそう遠くないという意味」(有力日銀関係者)とされ、日銀は年明けの1月利上げの選択肢を視野に入れつつ、情勢をさらに見極める考えだったとみられる。
一段と踏み込んだ情報発信がなされたのが1月中旬だ。植田総裁が15日、1月の決定会合で利上げを議論すると明言した。氷見野良三副総裁が前日、同趣旨の考えを示していただけに、日銀が金利引き上げに傾いている点を印象付けた。背景にあるとみられるのは、賃金・物価情勢の判断に関連する2つの変化だ。
期待通りになりそうな春闘の賃上げ
まず、今年の春季労使交渉(春闘)での賃上げが期待通りになりそうになってきた。
昨年12月に日銀は「(2025年の春闘については)現時点ではあまりに情報が少ないので、こうなりそうだということを申し上げるのは控えさせて頂ければと思う」(植田総裁)と慎重だったが、年明け後、状況は変わった。「年初の各界の方々のご発言や支店長会議で聞いた全国の(賃上げの)状況は前向きな話が多かった」(同)という受け止め方になったのだ。
大企業と比べて賃上げが広がらない懸念があった中小企業についても「アンケート調査などを見ると高めの賃上げが実現しそうになっている」(日銀筋)という。

第2の変化は、円安を背景とする輸入物価の上昇圧力だ。
昨年12月時点で、日銀は「現状、輸入物価の前年比は割と落ち着いている」としていた。実際、前年同月比の輸入物価上昇率は昨年11月まで3カ月続けてマイナスだった。しかし、年明けになると、日銀から「前月比でみるとかなり高い伸び」(氷見野副総裁)といった判断も示された。確かに前月比の輸入物価は11月まで2カ月連続でプラスだった。
最近出た12月の数字は前月比はマイナスになったものの、前年同月比はプラスに転じた。円安が再び進めば、輸入物価の上げ圧力がジワジワと強まりそうだ。
政権も気にする円安→輸入物価上昇
その点には政権サイドにも問題意識がありそうで、「日銀が利上げを検討することと、我々がデフレ脱却を目指す段階であることは、矛盾するものではない」(赤沢亮正経済財政・再生相)といった利上げに理解を示す発言が出ている。
1月の日銀決定会合の次の3月会合までは約2カ月の間隔があり、仮に1月に利上げを見送り円売りが進んでしまった場合、機動的に対応しにくい点も政権側の考え方に影響しているだろう。
日銀は今後、トランプ氏の米大統領就任後の言動、およびそれに対する市場の反応などを見極めるはずだが、日銀内ではこんな声も聞かれる。「次期米政権の政策をめぐる不確実性はいつになったら消えるかわからない」。とすると、どこかで「見切り発車」しないと、いつまでたっても金利を上げられなくなりかねない。
日銀はそうした現実も踏まえ、追加利上げの是非について最終的に判断を下す。