「丁寧な説明重要」繰り返す
日銀の植田和男総裁は23日の衆参両院の閉会中審査で「政策への考えを幅広い層に丁寧かつわかりやすく説明することは極めて重要」と繰り返した。利上げを決めた7月31日の金融政策決定会合後、株式や為替など金融市場が乱高下したため、説明責任や透明性を重視する姿勢を強調した。
閉会中審査に日銀総裁が出席するのは約9年ぶりだ。衆院事務局によると、衆院では2010年9月以来となる。閉会中審査への日銀総裁招致を決めたのは8月6日で、株価が暴落した直後だ。立憲民主党が開催を求め、自民党と立憲民主党の両党国会対策委員長が会談して合意した。23日の午前と午後、衆参それぞれ約2時間半ずつ開いた。
日銀は、日銀法で金融政策の独立性を定められている。国会にはおおむね半年に1回、経済・金融情勢や金融政策などを説明する報告書を提出し、衆参両院で説明する。業務などの説明のため、国会が求めた場合は総裁らが出席することになっている。
日銀では、黒田東彦前総裁が任期中に年度平均で28日程度国会に出席した。植田総裁は就任後、23年度で29日、24年度に入ってからは13日出席した。日銀関係者は「国会出席は直前に決まることが多いため、海外からの来客を含む中銀や金融関係者らとの面会が直前にキャンセルになったこともある」と話す。
政府関係者は「国会からの要請があれば他の予定に優先されるのは当然だ」と指摘する。与野党からは、国会日程で首相や外相らの日程が縛られ、海外の重要な会議に出にくい現状を変えるべきだとして国会改革を求める意見があるが、解消には至っていない。
日本時間の23日には世界の経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が開幕した。植田総裁は23年は出席したが、今回は欠席した。日銀関係者によれば、閉会中審査の日程が決まる前から植田総裁が出席しないとの予定は決まっていた。
ジャクソンホール会議は世界の中央銀行幹部や経済学者が集うことで知られる。基本はFRBの発信の場としての位置づけだが、「コリドートーク(廊下での会話)ができる場としては重要」(日銀関係者)。日銀が政策転換した局面で、植田総裁の出席を望む声も一部にはあった。