主要企業の経営者20人に2025年の株式市場の見通しを聞いたところ、9割が日経平均株価の終値ベースの史上最高値である4万2224円を超えると回答した。内外景気の拡大が企業業績を支えるとの見方が目立つ。金利上昇の恩恵を受ける銀行や、成長が続く半導体関連、賃上げ効果が波及する小売りなどの期待が高い。
18人が25年も最高値を更新すると回答した。高値予想は平均で4万4450円となり、11〜12月に高値を更新するとの見方が75%にのぼった。三菱地所の中島篤社長は「内外景気の拡大により、年後半にかけて株高へ向かう」とし、11月には4万8000円まで上昇すると予想する。
製品・サービスの値上げが業績を伸ばし、実質賃金が上昇するとの期待が根強い。大和ハウス工業の芳井敬一社長は「賃金上昇が確認され、内需中心に堅調な業績の推移を見込む」とみる。インバウンド(訪日外国人)需要が業績を支えるとの見方も多い。
世界経済にも楽観的な意見が目立つ。米連邦準備理事会(FRB)が一段の利下げに動くとの見立てから、SMBC日興証券の吉岡秀二社長は「利下げ効果から米国を中心に設備投資の需要が拡大し、製造業にプラス」とする。
業種別では小売りや食品のほか、日銀の利上げ継続観測から銀行など金融関連への関心が高い。ユニ・チャームの高原豪久社長は「金利上昇や持ち合い解消進展などの材料が豊富」と指摘する。
生成AI(人工知能)の普及は半導体関連の追い風になる。「人手不足感から、IT(情報技術)やDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の設備投資は拡大」(三越伊勢丹ホールディングスの細谷敏幸社長)との見方から、ITサービスも注目を集める。防衛や設備投資の需要を取り込むとして、機械業界を有望視する声もあった。
1月に発足する米トランプ次期政権の影響は、見方が分かれた。セコムの吉田保幸社長は「政権立ち上げ時の景気刺激策を契機とした米国株の上昇に伴い、日本株も上昇が始まる」とみる。一方で保護主義的な通商政策への懸念が株価の上値を抑えそうだ。伊藤忠商事の岡藤正広会長は「年後半はトランプ関税の悪影響で株価は調整」と身構える。安値予想の平均は3万7025円だった。
経営者が選ぶ有望銘柄、伊藤忠商事が首位 半導体・銀行も注目
2025年の有望銘柄を聞いたところ、前年2位だった伊藤忠商事が首位となった。非資源分野に強く、収益拡大へ大胆な投資に踏み切る姿勢は株式市場で評価が高い。商社セクターは「米トランプ次期政権発足による景気の底堅さ」(大和証券グループ本社の荻野明彦社長)といった理由でも注目を集める。
生成AI(人工知能)の普及を受け、インフラや半導体関連も上位に入った。2位の日立製作所はAIの利用拡大で電力需要が増え、電気を効率的に配分する送配電設備の伸びが見込まれる。
4位の信越化学工業は半導体ウエハーの需要が一段と伸びるとの観測がある。世界トップシェアの半導体製造装置を手掛ける東京エレクトロンは8位。半導体製造装置を有望とした日本ガイシの小林茂社長は「電子部品やデバイス工業の出荷・在庫循環の好転」を理由にあげる。
金利の上昇で貸し出し利ざやの改善が見込まれる銀行は、9位以内に三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループの2社が入った。「賃金の上昇により個人消費が持ち直す」(富士フイルムホールディングスの後藤禎一社長)として、小売業界にも関心が高まる。
地政学リスクへの対応力も試される。ゲームや音楽、映画など豊富なコンテンツを持つソニーグループは6位だった。国際競争が激化する自動車業界は中長期でなお成長が見込めるとの声があった。