投資情報ななめ読み

投機筋の円売り越し幅、ほぼ解消 円安圧力弱まる

日経新聞より引用

投機筋による円安圧力が弱まっている。米商品先物取引委員会(CFTC)によると、6日時点でヘッジファンドなど非商業部門(投機筋)の円売り越し幅は1万1354枚(1419億円)に減った。年初からの円安局面は転機を迎えた。

前週比で6万2106枚(85%)急減し、2021年3月以来、約3年5カ月ぶりの少なさとなった。ロシアによるウクライナ侵略などを背景にインフレが加速し、米連邦準備理事会(FRB)が22年3月に利上げを開始する前の水準に戻った。

円売り越し幅は7月2日時点では18万4223枚(2兆3027億円)とリーマン・ショック前の07年6月以来の大きさに膨らんでいた。減少は5週連続となる。

円売り越し幅の推移は、低金利の円を調達してドルなどの高金利通貨で運用して金利差収益を得ようとする「円キャリー取引」の動向の一部を表すとされる。円を売って高金利通貨に両替するため、この取引が活発になるほど円売り圧力が強まる。

22年にFRBが利上げを始めて以降も日銀はマイナス金利政策を続けていた。日米金利差が拡大するにつれて円キャリー取引も活発になり、投機筋の円売り越し幅が拡大したとの見方が多い。

だが、24年7月以降は日銀の追加利上げやFRBの利下げ観測が強まり、金利差の縮小が意識されてきた。7月中旬に1ドル=161円台を付けていた対ドルの円相場は8月5日に一時、1ドル=141円60銭台まで上昇。この過程でCFTCのデータ上は円売り越し幅がゼロに近づいたため「円キャリー取引の一部は解消した可能性がある」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)。

市場では円キャリー取引の規模感を巡り、論争が続いている。米ゴールドマン・サックスはCFTCデータからは「円キャリー取引は9割程度は巻き戻されたといえる」と指摘。米JPモルガン・チェースは6日時点で5〜6割程度、その後も7割台まで巻き戻しが進んだとの見方を示す。スイスの金融大手UBSは巻き戻しの規模を4割程度とみる。

円キャリー取引に明確な定義はなく、全体の規模感を示す公式な統計もない。ただ、円キャリー取引の巻き戻しが完全に収束したとみる向きは多くない。

岡三証券の武部力也シニアストラテジストは「南海トラフ地震などの地政学リスクもくすぶる中、市場が動揺する状況で日銀は追加利上げに踏み切りにくくなった。日米金利差を巡る不透明感から円キャリー勢は持ち高を今すぐ一方向に傾けにくいのではないか」と指摘する。

ヘッジファンドなどの投機筋は手元資金に借入資金を合わせてレバレッジ(てこ)をかけた運用を好む。円安が進んできた局面では、これに円キャリーを組み合わせた取引が横行してきたとされる。その動きに逆回転がかかったことで円高・株安が共振し、大幅な株安をもたらしたとの見方も出ている。

今週は14日発表の7月の米消費者物価指数(CPI)、15日発表の7月の米小売売上高が注目される。

前週発表の7月の米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況感指数は市場予想を上回り、週間の米新規失業保険申請件数も予想を下回ったことで、米景気への過度な悲観は薄れつつある。りそなホールディングスの井口慶一シニアストラテジストは「米景気が本当に後退するのかを探っていくステージに移っている。円相場は1ドル=145〜150円あたりで落ち着きどころを探る展開になりそうだ」と話す。

ただ、CFTCのデータで円売り越し幅の巻き戻しが顕著だった6日以降は1ドル=147円90銭台まで円安・ドル高方向に振れる場面もあった。「そのタイミングで円売り持ち高を積み上げる動きが出ていた可能性がある。米CPIや米小売売上高が大幅に弱含めば、140〜141円近くまで円が上昇するリスクもある」(あおぞら銀行の諸我氏)との声も聞かれる。

短期トレード向きの「DMM FX」

-投資情報ななめ読み