防衛ライン見えにくく
市場では11、12日と連日で為替介入の観測が浮上した。政府が円相場の変動を抑える目的ではなく、円を押し上げるために円買い介入に動いているとの見方も出る。為替介入による「防衛ライン」は見えにくく、週明け15日にも次の為替介入が実施されるとの警戒感が強まっている。

12日のニューヨーク外国為替市場で円相場が急騰する場面があった。日本時間午後9時30分に公表された6月の米卸売物価指数(PPI)が市場予想を上回り、公表直前の1ドル=158円台半ばから159円台まで下落した。午後10時ごろから円買いの動きが強まり、午後10時15分には157円30銭前後と11日の高値を超える水準まで円高に振れた。
特に材料がない中で勢いのある円買いが入ったことに、市場では政府・日銀による連日の円買い介入ではないかとの観測が浮上した。実は11日夜に円が短時間に4円ほど円高に振れた際にも円買い介入観測が出ていた。市場関係者は日銀が12日公表した16日の当座預金残高の見通しから、11日夜に3兆~4兆円規模の円買い介入があったと推測する。
前回介入があったとみられる4月29日には1週間で5円超も円安・ドル高が進んだのに対し、今回は161円台を付けた6月28日から7月11日まで160~161円で横ばい圏。規模も4月29日が推計5兆円だったのに対し、7月11日の「介入」は相対的に小さい。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「円安が進むのを食い止める介入ではなかったので、金額が小さかった可能性がある」と指摘する。
これまで為替介入の条件としては過度な変動が大きな要素を占めるとみられてきた。主要7カ国(G7)の合意でも「為替レートの過度な変動や無秩序な動き」が経済に悪影響を及ぼす場合は介入を許容するとしている。今回は過度な変動ルールに該当しないとも受け取れる「介入」だったため、市場参加者は次の介入のタイミングを読みづらくなっている。
警戒感が強いのが日本が祝日の週明け15日だ。海外を中心に通常通り取引されているが、円を最も売買する日本の市場参加者が少なく取引が細るため、少ない金額で円相場を押し上げられる可能性がある。実際、4月29日は祝日で、このときは160円台から154円台まで円高が進んだ。