外国為替市場で円安が加速している。対ドルでは2日の東京市場でも1ドル=161円台後半と約37年半ぶりの安値圏で推移している。このところ円相場は日米金利差との連動が薄まる一方、米株価指数と歩調を合わせる場面が目立っている。根強い売り圧力を背景に、円がさらに下値を模索する展開を見込む声は根強い。
「(円安・ドル高には)日米金利差を超える過熱感がある」。外為市場関係者からこんな声が聞かれるようになった。
SBIリクイディティ・マーケットの鈴木亮専務取締役は「需給要因」が円安の過熱感の背景にあるとみる。低金利の円を調達して高金利通貨を買う「円キャリー取引」の活発化に加え、為替リスクをヘッジ(回避)した外債からヘッジしないオープン外債への入れ替えや、輸入企業を中心とした国内実需筋による円売り・ドル買いが多いためだ。
金利差と乖離(かいり)して動く円相場は、足元では多くの投資家が運用の参考指標とする米S&P500種株価指数との連動を強めている。6月18日に5487.03と最高値を更新したS&P500種は1日も5475.09と高値圏を維持する。みずほ証券の山本雅文チーフ為替ストラテジストは米株高と円安が連動する理由に関し「米株への資金流入や、株高を受けた『リスクオン』による円キャリーの増加」があるとみる。
実際、日本の個人投資家の米株人気は鮮明で投資信託には資金流入が続いている。上場投信(ETF)を除く国内公募の追加型株式投信で最大規模の「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」には、1〜6月に前年同期比3.4倍の1兆230億円(QUICK推計)が流入。新NISA(少額投資非課税制度)の後押しもあって米株投資は衰えをみせず、個人の円売り・ドル買い需要は高いままだ。
さらに投機筋も再び円売りに傾いている。米商品先物取引委員会(CFTC)のデータによると、6月25日時点で米通貨先物市場でのヘッジファンドなど非商業部門(投機筋)による対ドルでの円の売越幅は17万3900枚となった。日本政府・日銀による為替介入観測が浮上する前である4月23日以来の高水準だ。株高で投機筋の投資余力は増し、円売りの持ち高を手じまう雰囲気に乏しい。
止まらない円安に対し、日本政府・日銀の円買い介入への警戒感はもちろん高まる。だが、足元で海外時間で円安が進行することが多い。そのため、市場では「神田真人財務官が7月末で交代するのを前に、海外投資家は通貨当局が介入しづらくなったとみている節がある」(国内証券の為替ストラテジスト)との声も漏れる。
みずほ証の山本氏は介入がいつあってもおかしくないとみるものの、株高傾向や米利下げ観測の後退を踏まえて円相場の下値を巡り「165円は見ておく必要がある」と話す。米金利の高止まりで「(ドルの)天井がみえにくくなっている」(国内銀行の為替ディーラー)なか、円相場がじりじりと水準を切り下げる展開は続きそうだ。