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円、まさかの4年連続安 縮まぬ金利差に円売り拡大の芽

日経新聞より引用

2024年の対ドルの円相場は4年連続で下落し、過去最長記録に並んだ。23年末には市場参加者の多くが「24年は円高進行」とみていた。想定に反して1ドル=156円台という歴史的な円安水準に下落しているのは日米の金利差が縮まらないためだ。投機の円売り拡大の芽も残っており、25年初めから波乱含みの展開となる。

約34年ぶりの160円台到達に、政府・日銀による過去最大規模の円買い介入――。想定外が相次いだ24年の東京外国為替市場で最後の「サプライズ」となったのが12月の円安進行だった。対ドルで約8円下落し、三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリストも「ここ1カ月の動きは予想外」と振り返る。

23年末や24年初めに円安進行を予想する声は少なかった。QUICKの24年1月調査では、回答した63社のうち29社が「円相場は24年12月に年間で最も円高の水準にある」と予想した。為替相場の予想レンジも高値の平均は1ドル=131円の円高・ドル安水準だった。

蓋をあけてみると全く異なる展開が待っていた。円相場は23年末の1ドル=141円台から大幅に下落し、31日には1ドル=156円台を中心に推移した。下落率は10%と23年の7%を上回る。4年連続の円安はアベノミクス開始前後の12〜15年と並び、変動相場制に移行した1973年以降で最長だ。

主な通貨の値動きを合成した「日経通貨インデックス」をみても円の弱さが際立つ。24年の円は23年末比で6.4%下落した。「G10」と呼ばれる主要10通貨の中ではニュージーランドドル(6.6%安)に続き2番目に大きい下落率となった。最大の下落率となった21〜23年に続き、24年もほぼ「最弱」の状態が続く。

市場参加者の誤算は、日米の金利差が想定ほど縮まなかったことに起因する。

お金は金利が低い方から高い方に流れる。低金利より高金利で運用した方が多くの利益が見込めるためだ。23年までは利上げを続ける米連邦準備理事会(FRB)と緩和を続ける日銀の金融政策の違いから金利差が大きく広がった。金利の低い円で借りて利回りの高い資産で運用する「キャリー」取引を誘発した。

24年はFRBが利下げに転じ、日銀が利上げに動くことで金利差が縮小し、円安に歯止めがかかるとの見方が多かった。ところがFRBの利下げは市場の想定ほど進まず、米政策金利は年初の予想より0.5%高い4.25〜4.5%の水準にとどまる。

日銀が12月の金融政策決定会合で利上げを見送り、日米の政策金利差は4%超開いたままだ。この金利差は円キャリー取引が活発だった06〜07年に匹敵する大きさだ。

25年の円相場を占う上で円キャリー取引の再開が焦点の一つだ。24年に1ドル=160円を超えて円安が進む原動力となった。24年8月の円急変動でポジション(持ち高)の解消が進み、いったん沈静化している。

キャリー取引を映す代理変数として市場が注目するのは米商品先物取引委員会(CFTC)が集計する投機筋の円ポジションだ。24日時点で2300枚の円買い越しとなっている。「キャリー取引全盛」の7月には18万枚を超す円売り越しだった。投機筋が円売りを積み増す余地は大きい。

FRBのパウエル議長は12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で利下げを急がない姿勢を示した。インフレ再燃なら利下げ打ち止めの可能性も指摘されており、日銀も利上げを慎重に進める構えだ。25年に日米の金利差が大きく縮む展開は想定されてない。

金利差が縮まないとの見立てはキャリー取引を誘発しやすい。三井住友銀行為替トレーディンググループの納谷巧グループ長は「相場変動が落ち着いてくれば、円キャリー再開の動きが出てきてもおかしくはない」とみる。

市場では次の節目として1ドル=160円や24年安値の161円90銭台が意識される。25年も対ドルで円安が進めば、変動相場制で初めて5年連続の下落となる。中長期的な視点で円相場を考える上でも重要な1年になる。

(佐伯遼)

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