【ニューヨーク=三島大地】大手格付け会社ムーディーズ・レーティングスは16日、米国の信用格付けを最上位の「Aaa(トリプルA相当)」から「Aa1(ダブルAプラス相当)」に引き下げた。政府債務や利払い費が増加していることを理由に挙げた。ムーディーズは唯一、米国に最上位の格付けを付与する主要格付け会社だった。
主要格付け3社がすべて「格下げ」
ムーディーズは2023年11月に米国の信用格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げていた。当時は24会計年度の予算案が成立するめどが立っておらず、ムーディーズは「政策立案者が債務問題に対応する見込みがないと判断した場合、米国は格下げ圧力に直面する」と警告していた。

米国に最上位の格付けを付与する主要格付け会社はなくなった。S&Pグローバル・レーティングは11年8月に、フィッチ・レーティングスは23年8月に米国の格付けを最上位のトリプルAからダブルAプラスに1段階引き下げている。
ムーディーズは過去10年以上にわたり、米連邦政府の歳出が増える一方で、減税によって歳入が減ってきたと指摘した。経済や金融を巡る米国の優位性は認めたものの、「これらが財政指標の悪化を完全に相殺することはできない」と結論づけた。
格付け見通しは「安定的」
米連邦議会下院指導部が12日に示した減税法案によると、25〜34会計年度の10年間で減税規模は約4兆ドルに達する。減税の多くが単純延長に過ぎず、景気の押し上げを通じた税収増は期待しづらい。
ムーディーズは現在の減税法案によって「(社会保障支出などの)義務的支出と財政赤字の大幅な削減が実現されるとは信じていない」と断じる。金利上昇に伴う利払い負担が高まっており、「今後10年間で連邦政府の基礎的財政収支の赤字が約4兆ドル増加する」との試算を示す。
格付けの見通しは「安定的」とした。米ドルが基軸通貨として通用していることにより、政府債務を「中程度で比較的予測可能なコストで借り換えるのを下支えしている」とした。
格下げを受け、米債券市場では米国債が売られる場面があった。米長期金利の指標となる10年物国債利回りは、米東部時間16日午後5時(日本時間17日午前6時)前に一時4.49%と、午後4時時点に比べ約0.05%上昇(債券価格は下落)した。