スイスの通貨フランが下落している。22日の外国為替市場では対円で一時1フラン=172円台半ばと、10月下旬以来およそ1カ月ぶりのフラン安・円高水準をつけた。25日の東京時間でも同水準で推移した。スイス国立銀行(中央銀行)のシュレーゲル総裁がマイナス金利を復活させる可能性があると発言したことで、緩和的な金融環境を維持するとの観測が強まりフランが売られた。

シュレーゲル総裁は22日にチューリヒで開いたイベントで、物価安定のためにマイナス金利政策を復活させる可能性があると示唆した。シュレーゲル総裁は10月に副総裁から昇格し、就任後はマイナス金利政策を実施する公算が大きいと発言を繰り返している。スイス中銀は2022年9月にインフレを抑えるため約8年間続いたマイナス金利政策を解除した。
政策金利はピークの1.75%から足元では1%まで引き下げており、前回9月会合の公表文では「今後数四半期でさらなる利下げが必要になる可能性がある」としていた。SMBC信託銀行の合沢史登シニアマーケットアナリストは「日本とスイスの金融政策の方向性の違いを意識し、フラン売りが膨らんだ」と分析する。
目先はフランの下落が続くとの観測が根強い。英LSEGによると、市場では現在の政策金利である1%から0.25%程度まで利下げを続けるとの見方が優勢だ。あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジストは「短期的には1フラン=168〜170円台までフラン安が進む可能性もあるが、今年最安値の1フラン=165円台に迫るには円高圧力も必要になりそうだ」とみる。