対ドルの円相場で変動の大きな地合いが続く。夏季休暇中の市場参加者が多く、商いが薄いことが背景にある。さらにコンピューター分析で売買のタイミングを判断する「アルゴリズム取引」が円の乱高下を助長しているとの見方も広がっている。
直近で顕著だったのが日本時間21日夜、米雇用統計の年次改定(2024年版)公表時だ。予定時刻の午後11時になっても、米労働省のホームページ(HP)上には公表資料が掲載されなかった。にもかかわらず円相場は一時1ドル=146円80銭前後と直前から1円超下落した。
実際にHPで最新の資料を確認できたのは約30分後。それまでは23年版が掲載されたままだった。外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「円相場が何に反応したか真相は不明だが、アルゴが23年版の結果を最新版と誤認し、円売り・ドル買いの動きが出た可能性がある」とみる。
アルゴを巡り、国内ではたびたび日銀の金融政策決定会合が話題に上がる。決定内容の公表時刻は定まっていない。発表までの時間が長引けば様々な思惑が生まれやすい。実需筋が取引を手控える中でアルゴ取引によって円が乱高下することも珍しくない。
7月末の会合時には正午を過ぎても結果が公表されず、日銀HPにアクセスが集中。一時的に閲覧できない状況に陥った。このアクセス集中にもアルゴが関わっていたとの声がある。
人工知能(AI)の浸透もあり、SNS上の思惑などにさえもアルゴが反応する場面が出てきているという。取引主体側のリテラシー向上に加え、公的資料の公表のあり方を議論すべき時にきているのかもしれない。