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「米利上げ、年内あと2回」クラリダ元FRB副議長

日経新聞より引用

米連邦準備理事会(FRB)は、金融政策を決める米連邦公開市場委員会(FOMC)を25〜26日に開く。市場では、年内の利上げは7月を含めあと1回との見方が多い。パウエル議長の下で副議長を務めた米運用大手ピムコのリチャード・クラリダ氏は今後の利上げについて「年内2回のシナリオの可能性は高い」と指摘した。米景気は「23年冬にも後退するが、深まらない」との見通しを示し、FRBは来年の上半期にも利下げに踏み切ることがありうるとした。

――FRBの方針をどうみますか。

「年初には市場とFRBが一致していなかったが、今の市場の金利織り込みはFRBのコミュニケーションと一致している。FRBが指摘する通り今後のデータ次第だが、可能性が高いシナリオはあと2回の利上げだ」

「7月のFOMCでは利上げを決めるだろう。ただパウエル議長の記者会見では、9月の次回会合での利上げを約束することはしないとみている。インフレは彼らが期待していたより粘着的だ。FOMCメンバーの講演などでも年内のさらなる利上げを示唆しているが、その時期は9月とは限らない」

――インフレはなぜ想定以上に粘着的なのでしょうか。

「一つは労働市場が予想以上に底堅いことだ。FRBは15カ月にわたって利上げを続けているが、雇用は非常に堅調だ。失業率も非常に低い。もう一つは住宅だ。米国のインフレ指数の大部分を占める賃料の上昇が続く。ただ賃料上昇は今後落ち着く可能性もある」

――米国経済はどうなると見ていますか。

「米国経済は年末にかけて、あるいは来年初めには景気後退に転じるとみている。ただし景気後退が深まったり長引いたりはしないだろう。インフレ率を目標の2%に近づけるためには労働市場の軟化が必要であり、FRBが予測しているような失業率の上昇は歴史的にみても景気後退につながる。その点に関してはFRBと同意見だ」

「労働市場は遅行指標で、いま市場が好調だからといって今後の景気後退を否定するものではない。6月の消費者物価指数(CPI)も、米経済が今年後半に後退するという見方を再確認させた」

「景気後退を受けてFRBは来年の上半期にも利下げに踏み切る可能性がある。たとえインフレ率が2%の目標を上回った状態が続いたとしても、基調的なインフレ率が低下している限りは利下げを検討するだろう」

――FRBはどこまで金利を下げるでしょうか。

「それに対する正確な答えは持っていない。インフレの根本的な進展という点でも、データという点でもあまりにも不確定要素が多い。FRBが利下げに踏み切るという確信はあるものの、最終的な政策金利の水準は今後出てくるデータ次第だ」

――景気に楽観的な株式市場をどうみますか。

「恐怖指数として知られるVIX指数は非常に落ち着いた水準にある。一方で債券市場はFRBが利上げを開始して以来、多くの悪材料を織り込んだ。積極的な利上げサイクルやシリコンバレーバンク(SVB)の破綻、粘着質で頑固なインフレなどだ。債券市場と株式市場が異なる見方で経済を捉えている」

「明確に言えるのは株式市場が『ノーランディング(無着陸)』シナリオを織り込んでいるように見えることだ。ノーランディングとは、4%のインフレを受け入れFRBがインフレ退治の利上げを諦める道だ。そうすれば株式市場には追い風になるだろう」

――FRBが金融を引き締めすぎるリスクはないのでしょうか。

「パウエル氏自身や委員会の他のメンバーは、この点についてかなり明確にしている。『引き締めすぎるより、引き締めが足りないリスクの方が大きい』ということだ。金融政策の調整は非常に難しい。現時点でFRBが重視しているのは、あくまでもインフレ率を(2%の)目標に向けて低下させることだ」

――2%の物価目標を引き上げるべきだと思いますか。

「答えはノーだ。何もない状態からであれば中央銀行はもっと高いインフレ目標を選んだ方が良かったのではないか、という議論はあり得る。しかし実務的には世界中のほとんどの中銀は、他の数字も選べた中であえて『2%』を選んでいる。少なくとも3〜5年の間はインフレ目標を引き上げることはないだろう」

「2%という1つの数字で示すことは人々の予想インフレ率を固定するのに役立つが、逆に誤ったメッセージを伝えるリスクもある。経済は常にプラスとマイナスのショックに見舞われるためだ。いまは1つの数字を選んでいる世界の中銀が、今後レンジ型の目標を採用することはあり得る」

――SVBの経営破綻をFRBは予見できなかったのでしょうか。

「どのような利上げサイクルでも、目標は金融環境を引き締めることだ。私はFRBが積極的な利上げを行ったことは間違いだとは思わない。SVBの破綻は今の時代を映していた。ツイートが相互に接続され、瞬時にインターネットバンキングのアプリが起動する。1日で預金の25%や40%が流出する、今までにない事態が起き得る時代であることを示した」

「FRBはまた、欧州中央銀行(ECB)やスイス国立銀行がSVBやクレディ・スイスの経営危機の後も利上げを続けることができたのと同様に、金融の安定を支えるツールを用いて利上げに専念することができた。金融不安を抑えるために資金を供給する措置を迅速に決めたのは評価できる」

(聞き手は佐伯遼、南泰葉)

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